落し物Ⅲ
「ホントにココなの?」
『ココだって言ってたからなぁ~』
「ホントに?
あそこの建物、空爆されたみたいになってるけど…」
『取り壊し中だから…』
「もちろん相手も車で来るのよね?」
『ここに住んでるわけないだろ!』
「自縛霊がウヨウヨしてそうなんだけど…
私、車から出なくていい?」
『霊とかお化けとか信じてるの?』
「もし、いきなり”とぉ~っても可愛い子犬”が現れたとしても
私は、一瞬で気絶する自信がある!」
『そんな事、自信あるって言うな!』
「だってさぁ…」
『あっ!!』
「きゃっ、何? 何が出た?」
『そういえば…』
「いきなり大きな声出さないでよ、もう…」
『この辺でよく、女の人の幽霊が出るって話を聞いた事がある。』
「こんな時に何の話してんのよ!」
『毎回決まって、今日みたいな小雨の降る夜、
赤い傘を持った女の人が
3号棟の街灯の下でタクシーを拾うらしい。』
「3号棟って…、ここじゃない!」
『タクシーの運転手が行き先を聞くと、
その女は何も言わずうつむいている。
ミラー越しに見えるその女は、傘を差していたはずなのに
何故か雨でびしょ濡れになっている。
何故そんなに濡れているのか気になった運転手がその女に聞いてみると…』
「聞いてみると?」
『その女は顔を上げて、小声でポツリとこう呟くそうだ…
≪私が見えるの…≫ って!』
「きゃあ~~~~~~~~~~~!!」
『運転手が振り返って、後部座席を見ると女はいない。
しかし…、女が座っていた場所は濡れている…』
「ぎゃあ~~~~~~~~~~~!!」
『ホントがどうかは知らないけど…』
「もう、私ダメ…」
『MAKI、ちょっと大袈裟過ぎるだろっ。
こういう話はどこにでも…
あれっ? 赤い傘… あそこ、誰かいない?』
「いるわけ無いでしょ!」
『あれは、女だな…』
「見えない…私は見えない…」
『MAKIには、見えないのか? ほら、あそこ!・・・あれっ?』
「何?」
『いなくなった…』
「そんな人、最初からいないの!」
『おかしいなぁ~』
「おかしくない!」
『うわっ!!』
「今度は何?」
『MAKI… 後ろ…、後ろのシート…』
「やめて、やめて…
エロイムエッサイム、エロイムエッサイム…」
『(クスっ…)
あははははっ!
何だよ、MAKI。こんなのでビビッてんの?
エロイムエッサイムってなんだよ!』
「ZIN…」
『なんだ、MAKI? 泣いてんのか?』
「私、帰る…」
『嘘だよ。こんなに怖がるとは思わなかったよ。
ごめんな!』
「やだ…。」
『ほらっ、後ろに誰もいない… うわっ!』
「いやぁ~~~~~~~。」
『いないって!』
「・・・・・。」
『ごめんって。
ほら、コーヒーでも飲んで落ち着きなさい。
どんな男が来るのかわからないから、あとは俺に任せて。』
「・・・・・。」
『あと10分ぐらいで約束の時間だから
無線機のチェックをしておこう!
・・・って、ホントに怖い話ダメなんだな…。』
「・・・・・。」
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