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2008年6月12日 (木曜日)

落し物Ⅳ

『俺、外に出て様子見てくるから!
 MAKIはちょっと待ってて。』

「いや。私も行く。」

『車の中にいればいいじゃん。』

「車の中も怖いの!」

『そっか、ココの幽霊は車にも乗ってくるからな!』

「もう言わないで。」

『ホーンテッドマンションと一緒だと思えば大丈夫だろ。』

「お化けの話はもういいから…」

『わかったよ。じゃあ行くか!』

「ZIN。私さっきから気になってるんだけど…」

『何?』

「私達がココに来た時から、あの車ずっと停まってるんだけど…」

『あの車? 俺も気になってた。
 これから見に行こうと思ってるんだけど!』

「吉野さんの携帯番号、聞いてきたんだよね。」

『ああ。』

「電話してみればいいじゃん。」

『MAKI!』

「何?」

『お前、賢いな!』

「っていうか、ZINがバカなだけでしょ!
 早く掛けなよ。」

『わかった。
 ♪プルルルル~♪
 もしもし、吉野さんの携帯を拾った方でしょうか?』

〔そうです。〕

『吉野さんの代理で携帯を受け取りに来た者ですけど。』

〔そうですか…〕

『今、待ち合わせの場所にいるのですが、
 あなたは今どちらに?』

〔俺もいます。〕

『もしかして、ボックス型の白い軽自動車ですか?』

〔はい。〕

『そうですか。
 私達、その車が見える場所に居ますので、
 これからそちらに伺います。』

〔わかりました。〕

『MAKI、やっぱり、あの車みたいだ。』

「そう。」

『じゃあ、俺行ってくるから。』

「だから、私も行くって言ってるでしょ。」

『わかったよ。
 俺がそいつと話するから、
 一応、車のナンバー控えといてくれる?』

「了解!」

   ・
   ・
   ・

『トン、トン。
 すみませ~ん、携帯電話を受け取りに来た者です。
 この窓、開けてもらえますか?』

〔オタク誰? 女が来るはずじゃなかった?〕

『その女性の代理人です。』

「ZIN、控えたわよ。」

〔今、女の声がした。でも違う女だな。声が違う。〕

『あんた、電話の声、覚えてるのか?』

〔頭の悪そうな話し方だった。それでもっと低い声。〕

「ZIN、どうしたの?
 さっさと受け取って帰るわよ。」

『MAKIは、そこにいろ。』

「なんで?」

『いいから、こっち来るな!』

〔MAKIって言うんだ。 そこの子。〕

『あんたには、関係ないだろ。
 早く携帯電話を返してくれないか!』

〔わかったよ、ほらっ、これ。〕

『ありがとう。ところで…。
 この電話でどこかに電話したとか、何か利用しました?』

〔してないよ。信じてないなら携帯を開けばわかるよ。〕

『開けば?
 あっ! 液晶画面が!!』

〔俺がやったんじゃないから。
 俺が拾った時には、そうなってた。〕

『画面が潰れてる…』

〔壊れてると思ったけど、電話が掛かってきたから。
 まだ使えるけど、何にも見れないよ。〕

『この携帯、どこで拾ったんですか?』

〔駅のロータリー。 タクシー乗り場の近く。〕

『じゃあ、駅のロータリーで拾った時にはもうこの状態だったと?』

〔そうだよ、別に信じなくてもいいけど。
 ところで、オタクらは誰なの?
 代理人って弁護士かなんか?〕

『探偵です。』

〔うそ、マジ! 探偵? 本物?〕

『出来れば、電話番号だけでもいいから、連絡先教えてくれないかな?』

〔本物の探偵って初めて見たよ。
 やっぱ、オーラが違うね。
 最初、警察かと思ってさ、逃げようか考えてたよ。
 でさ、探偵さんってこんな仕事もすんの?
 やっぱり浮気調査ってのが多いんでしょ。〕

『まあね…』

「ZINっ! 何かあったの?」

『いや、別に。』

「急に相手の声が聞こえだしたけど!」

『大丈夫だから。』

〔なんか書くものない?〕

『えっ、あぁ。じゃあこれ使って。』

〔はい、電話番号。これでいい?〕

『いいよ。じゃあ今、電話掛けてみるから。』

〔いいよ。〕

『♪プルルルル~♪
 ちゃんと電話掛かったね。 ありがとう。』

〔ホントに使ってないから。
 何なら、電話会社に利用状況確認してみれば。〕

『わかったよ。』

〔じゃあ、俺帰っていいよね。〕

『あぁ、今日はありがとう。』

〔こういうのって、友達に言っていいの?
 守秘義務ってあるんでしょ。〕

『俺にはあるけど…』

〔友達に自慢するよ。 探偵に会ったって!
 あっ、名刺とか持ってないの?〕

『名刺?
 じゃあ、これ。』

〔やったー。また電話してよ、待ってるから。〕

『用事あったらね。 もう一つ聞きたい事が…』

〔じゃあね。〕

『あっ!帰りやがった。けど、まあいっか…。』

「ZIN?」

『何?』

「相手、テンション上がってたみたいだけど。
 機嫌悪くするような事、言ったんでしょ!」

『そんな事は言ってないけど
 探偵って言ったら、愛想良くなった。』

「どんな人だったの?」

『一言で言えば、ヲタクみたいな風貌。
 ハイキングウォーキングのQちゃんみたいな感じ。』

「ちょっとキモイかも…。」

『悪いヤツじゃなさそうだったけど。』

「コーラ、一気飲みとかして、
 山手線の駅名言ったりしそうだった?」

『出来ないだろ…。
 そんな話はいいから、早く吉野さんに電話返してあげよう!』

「ねえねえ、徳川十五代将軍の名前とか言えそうだった?」

『しつこいな。』

「ねえねえ、ブーブークッションを鳴らさずに座れそうだった?」

『MAKI! お前の後ろに赤い傘の女が!』

「そんなのいいから! スーパーイリュージョンは?」

『お化け怖くないの?
 お前、どんだけ”Mr.スズキックス”が好きなんだよ…。』

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2008年6月11日 (水曜日)

落し物Ⅲ

「ホントにココなの?」

『ココだって言ってたからなぁ~』

「ホントに?
 あそこの建物、空爆されたみたいになってるけど…」

『取り壊し中だから…』

「もちろん相手も車で来るのよね?」

『ここに住んでるわけないだろ!』

「自縛霊がウヨウヨしてそうなんだけど…
 私、車から出なくていい?」

『霊とかお化けとか信じてるの?』

「もし、いきなり”とぉ~っても可愛い子犬”が現れたとしても
 私は、一瞬で気絶する自信がある!」

『そんな事、自信あるって言うな!』

「だってさぁ…」

『あっ!!』

「きゃっ、何? 何が出た?」

『そういえば…』

「いきなり大きな声出さないでよ、もう…」

『この辺でよく、女の人の幽霊が出るって話を聞いた事がある。』

「こんな時に何の話してんのよ!」

『毎回決まって、今日みたいな小雨の降る夜、
 赤い傘を持った女の人が
 3号棟の街灯の下でタクシーを拾うらしい。』

「3号棟って…、ここじゃない!」

『タクシーの運転手が行き先を聞くと、
 その女は何も言わずうつむいている。
 ミラー越しに見えるその女は、傘を差していたはずなのに
 何故か雨でびしょ濡れになっている。
 何故そんなに濡れているのか気になった運転手がその女に聞いてみると…』

「聞いてみると?」

『その女は顔を上げて、小声でポツリとこう呟くそうだ…
      ≪私が見えるの…≫  って!』

「きゃあ~~~~~~~~~~~!!」

『運転手が振り返って、後部座席を見ると女はいない。
 しかし…、女が座っていた場所は濡れている…』

「ぎゃあ~~~~~~~~~~~!!」

『ホントがどうかは知らないけど…』

「もう、私ダメ…」

『MAKI、ちょっと大袈裟過ぎるだろっ。
 こういう話はどこにでも…
 あれっ? 赤い傘… あそこ、誰かいない?』

「いるわけ無いでしょ!」

『あれは、女だな…』

「見えない…私は見えない…」

『MAKIには、見えないのか? ほら、あそこ!・・・あれっ?』

「何?」

『いなくなった…』

「そんな人、最初からいないの!」

『おかしいなぁ~』

「おかしくない!」

『うわっ!!』

「今度は何?」

『MAKI… 後ろ…、後ろのシート…』

「やめて、やめて…
 エロイムエッサイム、エロイムエッサイム…」

『(クスっ…)
 あははははっ!
 何だよ、MAKI。こんなのでビビッてんの?
 エロイムエッサイムってなんだよ!』

「ZIN…」

『なんだ、MAKI? 泣いてんのか?』

「私、帰る…」

『嘘だよ。こんなに怖がるとは思わなかったよ。
 ごめんな!』

「やだ…。」

『ほらっ、後ろに誰もいない… うわっ!』

「いやぁ~~~~~~~。」

『いないって!』

「・・・・・。」

『ごめんって。
 ほら、コーヒーでも飲んで落ち着きなさい。
 どんな男が来るのかわからないから、あとは俺に任せて。』

「・・・・・。」

『あと10分ぐらいで約束の時間だから
 無線機のチェックをしておこう!
 ・・・って、ホントに怖い話ダメなんだな…。』

「・・・・・。」

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2008年6月 9日 (月曜日)

落し物Ⅱ

〈いらっしゃいませ、何名様ですか?〉

「あの~、待ち合わせで…」

『MAKI、あそこにいるぞ。』

〈お待ち合わせですね、どうぞ!〉

「岩崎さん、お久しぶりです。」

【ZINさん、MAKIさん!】

『お元気そうですね、岩崎さん。
 こちらの方が電話でお話されていた吉野さんですね。』

《初めまして、吉野と申します。》

『一ノ瀬探偵事務所のZINです。』

「MAKIです。」

【ZINさんは、コーラですよね。
 MAKIさんは、何をお飲みになりますか?】

「すみません。 え~と、コーヒーで。」

『(俺は、もう決められちゃってるんだ…)』

【あれっ? コーラじゃない方が良かったですか?
 以前、コーラ以外は飲み物じゃないって・・・】

『コーラでいいですよ!』

「では、早速ですけど詳しいお話を聞かせていただけますか?」

【すみませ~ん、コーラとコーヒーお願いします!
 ・・・で、何でしたっけ?】

『(岩崎さんが説明するつもり?)』

「(そうみたいね…)」

『(大丈夫か?)』

「(とりあえず聞きましょう)
 ご依頼の詳しいお話を…」

【そうでしたね。
 えーと、私の友達で”吉野弥生”って言うんですけど
 弥生が携帯を落としちゃって。
 落としたの気付いたのは、家に帰ってきてからみたいなんですけど!
 あっ、その前に!
 弥生は、派遣で出版関係の仕事をしていて
 それで、朝早く起きて子供のお弁当を作ったり
 すごく頑張り屋さんで、イニシャルがY・Yなんですよ。
 面白いでしょ。
 それで・・・。】

『(イニシャルがY・Yって、面白いのか?)』

「(岩崎ワールドに入ってきたわね。 早く戻して!)」

『(わかった。)
 あの~、吉野さんが家に帰ってきた所の話に戻りませんか?』

【そう?
 弥生の事、知っておいた方がいいのかなって思って。】

『吉野さんとお話していけばわかりますから、大丈夫ですよ。』

【そうなの?
 えーと、どこまでお話しました?】

「家に帰ってきて、携帯落としたのに気付いた…」

【そうそう!
 それで、携帯どこにあるのか、家の電話から自分の携帯に電話したのよね?】

《うん。》

【そしたら、男の人が電話に出て、ビックリして電話を切ったのよね?】

《うん。》

「それで、岩崎さんに連絡をしたんですか?」

【そうなのよ。
 携帯に知らない人が出たって!】

「(ねぇ、ZIN。
 やっぱり、吉野さんに直接話を聞いた方が早いよね?)」

『(俺は、最初からそう思ってる… けど、言えない…)』

【ねぇ、聞いてる?】

『き、聞いてますよ!』

【それでね、私が弥生の携帯に電話してあげたの!
 そしたら、弥生の言う通り、男が電話に出て…
 私、聞いたの!】

『なんて?』

【どうして持ってるの?って。】

「相手は?」

【駅に落ちてたんだって。
 だったら、駅員さんに預けておいてって言ったんだけど
 駅から離れたからって言うから、どこにいるの?って聞いたの!】

『どこにいるって?』

【遠い所だって!
 意味わかんないでしょ。盗むつもりだったのね、きっと!
 人の携帯使って、へんなサイト見たりするつもりだったのね!】

「あの~、弥生さんの携帯返してもらう事になってるんですよね?」

【そうよ。
 だから私が、取りに行きますから返してくださいって言ったの!】

『相手は?』

【場所と時間を指定してきたの!
 そこの場所って、取り壊し中の団地がたくさんあって
 夜なんか人がいなくて静まり返っている場所なのよ。
 怖くない?
 そんな所に人を呼び出す意味がわからないの!】

『そうですね。
 わざわざその様な場所に人を呼ぶ意味がわかりませんね。』

【弥生の旦那は帰りが遅いし、女2人じゃ危険でしょ。
 だから、ZINさんたちに一緒に行ってもらおうと思って
 連絡したの!
 急にお願いしちゃって迷惑だった?】

『とんでもない。 迷惑なんかじゃありませんよ。
 逆に、お力になれて良かったと思っています。』

「でも、何で私たちを?」

【何言ってるの!
 お2人はあの時、私を守ってくれだじゃない!】

「盗聴器発見の時?」

【犯人を捕まえてくれたわ。】

『あれは偶然ですよ。
 現場に到着した時、近くの車の中で受信機持っているヤツを見掛けて
 車のナンバーとその様子の映像を撮っておいた。
 ただ、それだけの事です。』

【ホントに盗聴器ってつける人いるのね、信じられなかった…】

『では、お2人はご自宅へ戻って連絡を待っていてください。
 私達が代理人として行ってきますから。』

【場所、わかりますか?
 私が一緒に行ってナビしましょうか?】

『いいえ、大丈夫です。
 逆に振り回されそうですから!』

【えっ?】

「いや、なんでもないです。
 (ZIN!、余計な事言わないっ!)」

『はいはい。』

【じゃあ、弥生。
 あとはZINさんたちに任せて、私の家で連絡待ちましょう。】

《うん。 ZINさん、MAKIさん、よろしくお願いします。
 気をつけてくださいね。》

「はい、無事に取り返してきます。」


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2008年6月 8日 (日曜日)

落し物

「この渋滞、どうにかならないの?」

『俺に言われてもなぁ~、時間的にしょうがない!』

「もう~、この帰宅ラッシュむかつくぅ!!
 法律で車通勤禁止にしてくれないかな…」

『そりゃ無理だろ。』

「なんか冷たい言い方…」

『俺もイライラしてんの! 話かけんな!』

「尾行中と大違い。」

『尾行中は集中してるから、渋滞なんかでイライラしない。』

「だよね。私もそうかも!」

『あっ、そういえば!』

「何、ZIN?」

『昨日、久しぶりに本間くんから電話が着た。』

「本間くん? 前の事務所で一緒にやってた?」

『そう、その本間くん。』

「本間くんがどうしたの?」

『調査中に覆面パトカーに尾行されて、ストーカー幇助の罪で
 捕まりそうになったんだって!』

「何それ! どんな調査だったの?」

『良くわかんない。』

「聞いてないの?」

『話長そうだったから、聞き流した。』

「あんた、冷たい先輩ね…
 ZINの弟子みたいな感じだったじゃん!」

『別に俺、落語家じゃねーし…』

「どういう気持ちで本間くんが連絡してきたと思ってるの?」

『冗談だよ。そう怒るなって!
 本間くんが言うには、女の人の身辺調査をしてたらしいんだけど
 その女の人、過去にストーカー被害にあってたみたいで
 怪しい人がいるって通報されたんだって!』

「何日間の調査?」

『1週間…』

「1週間? そんだけ長い調査ならもっと慎重に…」

『…の2日目!』

「早っ! まぁ、過去に被害に合ってたんなら、敏感になってるわね。」

『かわいそうだよな…』

「どっちが?」

『被害者。』

「そうね。たぶんこれからも、ずっと過去の恐怖に怯えていくのね。」

『あぁ…。』

「でも、それでストーカー幇助に?」

『通報した女の人が言ったんだって!
 ストーカーに頼まれた人がいるって…』

「過去にストーキングしてた人と別人だったから?」

『そうじゃないの? そこまでわからない。』

「でも、探偵って同じような事してるから、しょうがないかな?」

『調査してるのがバレたら、プロの探偵とは言えないんじゃない!
 気付かれないで、普通に生活してもらうのがプロでしょ。』

「そうね。」

 ・・・ 目的地周辺です。音声案内を終了します。・・・

『この辺りらしいぞ! 依頼者はどこにいるんだ?』

「電話してみる。」

『とりあえず、ここに車停めるぞ!』

「もしもし、一ノ瀬探偵事務所のMAKIです。
 今、朝日公園に着きました。
 岩崎さん、今どちらにいらっしゃいますか?」

『どこだって?』

「公園の向かい側にクリーニング屋さん…
 あっ、はい、あります。 
 …の、隣のコインパーキング…」

『コインパーキングね。車動かすよ!』

「…の向かいのコインパーキングですね。」

『向かいのコインパーキング?
 最初から公園の隣のコインパーキングって言えばいいのに…』

「…の隣のファミレスですね。」

『だったら、最初からファミレスって言ってくれよ…』

「はい、そうです、ZINと2人です。今から伺いますので…
 では、また後ほど…
 ZIN!ファミレスだって!」

『聞いてたよ。 相変わらずだな、岩崎さん。』

「本人は、わかりやすく説明してるつもりなんだよ。」

『その気持ちは、伝わるんだけどね…』
 

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